
2026年5月27日、台湾・台北のシャングリ・ラ ファーイースタン 台北(台北遠東香格里拉)にて開催された「2026 カスタマー・シェアリング&イノベーション・サミット(AI時代におけるブランドのサステナビリティと精密マーケティング実践)」に参加してまいりました。
今年は、急遽臨時の席が設けられるほどの大盛況で、昨年のイベントの約1.5倍もの参加者が詰めかけていました。台湾市場におけるSalesforceとAIとデータ活用への熱量の高さを、入場直後から肌で感じました。
主催は、台湾屈指のSalesforceサミットパートナーであり、台湾におけるマッシュマトリックスの強力なパートナーでもある天新資訊(FITi)です。本記事では、現地で語られた台湾における最新のCRM動向をレポートいたします。
※ 天新資訊(FITi)ウェブサイト:https://www.fiti.com.tw/en/

イベントの背景とテーマ
Google Chromeによる「インフォームド・チョイス(十分な情報に基づいた選択)」メカニズムの推進などにより、消費者のプライバシー保護に対する意識はかつてない高まりを見せています。サードパーティCookieによる追跡が徐々に無効化される中、ブランドは従来の「受動的なトラッキング」から「能動的な関係構築」への転換を迫られています。
2026年現在、真にビジネスの差を生むのは保有するデータ量ではなく、データの背後にいる「人」をいかに理解するかです。本イベントでは、この新たな競争ルールの中で企業がとるべき「3つの重要なアクション」が焦点となっていました。
- トラッキングから価値交換へ: ファーストパーティデータ戦略を構築し、顧客が「理解されている」と感じることによる自発的なデータ提供を促す
- リアルタイムなデータブレインの構築: 分散した顧客の足跡を統合し、すべての接点を即座に意思決定の根拠とする
- 超大規模なパーソナライゼーションの実現: データを「自動化されつつも温かみのあるサービス体験」へと変換し、企業が真に「人間のように応答する」状態をつくる
イベントの講演者&サマリー(現地ハイライト)
各セッションでは、具体的なAI時代のアプローチや事例が共有されました。
オープニングスピーチ
FITi 副總經理(副社長)の李冠緯(Ken)氏、Salesforce 臺灣總經理(台湾ゼネラルマネージャー)の徐嘉聲氏より開幕の挨拶が行われました。 Ken氏からは「Googleが検索結果表示をAI回答中心へ移行しており、これからの社会でAI化は避けて通れない」との見解が示されました。自社を見つけてもらう難易度が上がる中、企業にとって要となるのはファーストパーティデータ(1st Party Data)であり、AI任せ一辺倒ではない「温かみのある」顧客対応の重要性が強調されました。
徐氏からは、AIと企業運用の鍵について語られました。LLM(大規模言語モデル)と連携するにあたっては、データの安全性や参照制御が必須であり、信頼できるデータ基盤が前提となることが強調されました。

「データの背後にある顔を見る:AI時代にCRMで描く企業の感情シナリオ」
Salesforce臺灣流通業總監(台湾流通業ディレクター)の姜瑜(Caroline)氏のセッション。 Caroline氏からは最新のレポートをもとに、AI活用の課題やマーケティングの動向が解説されました。「データがないことではなく、散在するデータの統合速度が勝敗を分ける」と語られ、企業がいかに迅速に顧客の全体像を把握し、AIの力と結びつけていくのかが、今後のマーケティングにおいて極めて重要になるという力強いメッセージが印象に残りました。
「BtoCからBtoAIへ:データをAIエージェントの指揮官にする」
Salesforce 資深業務經理(シニアアカウントマネージャー)の高星(Star)氏のセッション。 冒頭ではアニメ『進撃の巨人』を例に挙げ、「2年後、それぞれの業界や仕事はどうなっているだろうか?」と会場に問いかけ、激変する今の時代を鋭く描写していました。 消費者がAIエージェントに購買判断を委ねる「BtoAI」の時代において、従来のSEOは重要ではなくなり、これからは「AIに見つけられるための最適化」が重要になるとのことです。AIが新しい買い手になり得るという斬新な視点が提供されました。
会場では技術顧問(テクニカルアドバイザー)の馬西緯(Cory)氏による体験型デモも実施されました。参加者がQRコードを読み込んで簡易アンケートに回答すると、匿名訪問者が既存のCRMレコードと瞬時に照合され特定されていきます。デバイスデータから結果まですべてが分析・統合される様子を目の当たりにし、「リアルタイムのデータブレイン」の威力を参加者として肌で感じることができました。

「データ駆動から究極の体験へ:メルセデス・ベンツがAI時代に実践するパーソナライズされたカスタマージャーニー」
台湾メルセデス・ベンツ CIOの羅善文(Doreen)氏のセッション。 スローガン「Welcome Home」を掲げ、顧客に「覚えていてくれる」体験を提供しているという同社。10年前から蓄積してきたSalesforce上のデータ基盤があるからこそ、現在のAI活用が実現できているとのことでした。一方で、「AI活用の最大の決定要因は『良い自動車モデル』よりも『信頼できるデータ(AI Data Trust)』である」と、部署ごとにデータやAIが分断される 「AIの孤島化」を防ぐための部門横断でのデータガバナンスの重要性を強く訴えられていたのが印象的でした。
「B2C産業のDX:断片化から全体像へ、数万規模の加盟店管理の進化」
foodomoを運営する專聯科技の総経理(ゼネラルマネージャー)、簡心縈(Angela)氏のセッション。 foodomoとは、台湾のセブン-イレブンやスターバックスなどを展開する大手企業「統一グループ」が運営する、フード・日用品のデリバリーサービスです。年間約5億件もの注文と14.6万の加盟店を抱える巨大で複雑なエコシステムにおける実践的な内容を聞くことができました。Salesforceに情報を集約することで情報分断を解消した結果、加盟店の登録から契約審査までの期間が「約7.5営業日」から「24時間以内(単店登録は約1時間以内)」に激減。バックオフィス業務の効率が75%向上し、管理報告の確認時間も約80%削減されたというリアルな数字が発表され、会場も大きく沸いていました。 セッションの中では実際のSalesforceのスクリーンショットも多く共有され、「もしここにMashmatrix Sheetが埋め込まれていたら…」と活用のイメージが膨らみました。

イベントを通しての考察:AI時代における「現場」と「データ」の重要性
今回のイベントを通じてもっとも強く感じたのは、AIの活用には「信頼できるデータ(AI Data Trust)」と、現場の「人」による「温かみのある接点」の両輪が不可欠な要素だということです。
Salesforceの調査で示された「84%の消費者が製品と同等にサービス体験を重要視している」一方で、「クロスチャネルのデータを真に統合できている企業はわずか28%に過ぎず、データの断片化がAI導入の最大の障壁となっている」というデータは、まさにその課題を浮き彫りにしています。この指摘の通り、システム上でデータ統合を進めることは重要ですが、同時に、裏側でどんなに高度なAIを構築しても、最前線のスタッフが顧客の文脈をスムーズに把握し活用できなければ、真の価値を発揮するのは難しいのかもしれません。
また、不完全なデータはAIの誤判断に直結する懸念があるため、日々の業務の中で現場が無理なくデータの鮮度と品質を保てる環境づくりも、今後はさらに求められていくように感じました。
AIがどれほど進化しても、最終的に顧客と向き合い、温かみのあるサービス体験を提供するのは、やはり「人」なのだと思います。Salesforceのエコシステムに携わる一員として、AIを支えるデータ品質の維持と、それを扱う現場環境の大切さについて、改めて深く考えさせられる貴重な機会となりました。
まとめ
これからの競争は「誰がデータを所有しているか」ではなく「誰がより顧客を理解しているか」にシフトしています。AIとデータを活用し、トラッキングから価値提供へと企業競争のルールが書き換えられつつあることを肌で感じた、熱気にあふれたサミットでした。
総括の中でFITiのKen氏が「AI生成物は人間を真似てもあくまでAIである。『それっぽさ』ではなく企業の核心と顧客との温かみのある接点を重視すべきだ」と語っていたように、最後は「人」対「人」の温かい関係性が鍵を握っていくのかもしれません。
今回も貴重な学びの機会をご提供いただいたFITiの皆様に、この場を借りて心より感謝申し上げます。イベントを通じて得た気づきを胸に、マッシュマトリックスも、自社製品「Mashmatrix Sheet」を通じ、お客様の成長を支援してまいりたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。








